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車いすテニス、ジュニア、プロ、あらゆる立場の選手が同じコート上で戦う!『WJPチャレンジテニス』の型破りな魅力<SMASH>

2021.10.27|17:47|投稿者: スマッシュ編集部
車いすテニス、ジュニア、プロ、あらゆる立場の選手が同じコート上で戦う!『WJPチャレンジテニス』の型破りな魅力<SMASH>

「俺は子どもの頃から、ここで車いすテニスのレジェンド選手と練習試合して負かされて。『どうやったら勝てるんだ?』って悔しい思いしながら育ったんで、これが普通の環境なんです」

『WJPチャレンジテニスby BNPパリバ』の発起人の松井俊英は、明瞭な口調でそう言った。

 イベントを象徴する“WJP”の3文字は、Wheel chair(車いす)、Junior(ジュニア)、そしてProfessional(プロフェッショナル)の頭文字。それぞれの肩書を背負う選手たちが、時にダブルスパートナーとして、時にライバルとしてネットを挟み対峙したこのチーム対抗戦は、Diversity(=多様性)をテーマに掲げ、10月23日に開催された。

 ただ松井本人は、今さら“ダイバーシティ”という言葉を持ち出す必要もないほどに、多種多様な人々が同じコートに立つことを、日常としてとらえている。それは彼がテニスを始めた原点であり、今回のイベント会場でもある、千葉県柏市の吉田記念テニス研修センター(TTC)で見てきた景色に根差していた。

 東京パラリンピック金メダリストの国枝慎吾を輩出したTTCは、かねてより、車いすテニスのプログラムが充実した場として知られている。歴代の日本トップ選手たちが練習拠点とし、ジュニアたちと真剣勝負さながらの打ち合いを繰り広げるのも、ここでは普通の光景だった。

 松井も、車いすテニスの全日本チャンピオンに挑みながら、腕を磨いたひとりだった。
 「俺がジュニアの頃、大森(康克)さんという、めっちゃレジェンドな選手がTTCに居たんです。仕事中の事故で足を切断したんですが、やんちゃというか、ちょっと口が悪い人で。弟も、試合で負かされて泣いてました」

 自身もやんちゃな笑みを浮かべながら、43歳のベテランは、少年時代を思い返す。その彼も今では練習時に、ジュニア選手相手に打つことも多い。

 子どもの頃から培ってきたこの日常的な感覚を、多くの選手や人々とも共有できれば……、そんなある種無垢な想いがイベント発足の源泉だった。

 昨年に続く開催となった今大会では、対戦カードやチーム編成に一層の多様性を持たせたという。1チーム9名編成の団体戦が基本の対戦構造で、両チームとも車いすテニスとジュニア、そしてプロの男女選手で構成される。ただ対戦カードは、同カテゴリーどうしとは限らない。ジュニア対プロ、ジュニアとプロが混在するダブルス、さらには“ニューミックス”と呼ばれる車いすと健常者がペアを組む混合ダブルスなど、多様なケミカルや色彩が生まれる編成や顔合わせが多く実現した。

 それらの多彩な対戦カードのなかでも、松井がとりわけこだわったのが、車いすテニスジュニア選手と健常者ジュニア選手の真剣勝負だ。
  今回、イベントに初参戦した車いすテニスの小田凱人は、車いすテニスジュニアの世界1位に座す15歳。その小田と対戦した佐川永遠は、千葉県でトップクラスの14歳である。この顔合わせに関しては、当初実行委員の中でも「勝負にならないのでは? 小学生や女子ジュニアとの対戦の方が良いのでは?」と懸念の声が上がったという。

 だが、松井は断固反対した。

「小田君は中3なのだから、本当は同じ歳の男子と対戦させたかった。さすがに全日本レベルだと厳しいだろうけれど、千葉県のトップクラスなら勝負になる。その方が小田君だって嬉しいし、相手の選手だってテレビ中継もあるなかで試合ができるのは嬉しい。多くの人が見ているなかで、本気でやらない訳にはいかないじゃないですか。結果は、仮に大差になったって良い。その後、二人はずっと仲良くなれるかもしれないし、そういう場を作ってあげたいと思った」

「小学生が相手だったら、小田君に失礼だし小田君だって燃えてこない。同じ世代相手に『お前は千葉でトップかもしれないが、俺は車いすテニスで世界を張ってるんだ!』っていう、そういうところの戦いが俺は見たかった」
  松井が、このカード実現にこれほどこだわったのは、小田もまた、松井の熱に応えるだけの信念の持ち主だからだろう。試合は、小田も左腕から放つ強打で見せ場も作ったが、結果的には差がつき敗れる。その試合後の会見で、小田は大人びた口調で言った。

「僕は今日の試合で、障がい者や一般、ジュニアの壁は無いというメッセージを伝えたかった。だから同世代のジュニア選手と対戦したけれど、僕のスコアが悪かったので、今回それができなかった」

 悔しさをにじませるも、小田は「来年、もっとレベルアップして戻ってきたい」と明言する。松井がたぎらせた情熱は、新たな目的意識を小田の胸に灯したようだ。

 松井が少年時代から目にした景色のように、あるいは小田が発したいと願ったメッセージのように、年齢も性別も障がいの壁もなく、あらゆる立場の人々が同じコートに立てるのは、テニスという競技が持つ美徳の一つだろう。

 そのテニスの可能性をさらに拡張すべく、松井は今後、「このイベントを地方でもやりたいし、一般のテニス愛好家やシニアの方の参戦も実現させいたい」と言った。

 思えば、松井が育ったTTCのいたるところには、4つのボールを組み合わせたエンブレムが飾られている。

 4つのボールがそれぞれ象徴するのは、プロ、ジュニア、車いすテニス、そして一般のプレーヤーである。

取材・文●内田暁

【PHOTO】2020年全日本選手権での松井俊英ら男子選手のプレー集!

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2021.10.27 17:47 投稿者:
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