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プロテニスプレーヤーという職業の魅力を子どもたちに伝える〝夢の伝道者″鮎川真奈

2021.02.26|17:00|投稿者: 岡田洋介
プロテニスプレーヤーという職業の魅力を子どもたちに伝える〝夢の伝道者″鮎川真奈

鮎川真奈は、現役のプロテニス選手として世界中を転戦する傍ら、自ら主宰する「スマイルテニスプロジェクト」を通して子どもたちへのテニス普及活動を行い、また、祖父母が経営するテニスクラブ(千葉県野田市のロイヤルSC)でジュニア強化に携わっている。幅広く活動する鮎川に、プロジェクトに託す想い、コロナ禍で苦しむジュニア選手への想いなどを聞いた。

子どもたちはあっという間にミニラリーまでできちゃう

昨年、鮎川真奈は「スマイルテニスプロジェクト」の活動を本格的に開始した。公式サイトを立ち上げ、それまで鮎川自身のツアー活動をサポートしてきたTEAM・MANAのコーチやトレーナー、メンタルトレーナーなどのスタッフの協力を得て、さまざまなイベントを企画しはじめた。コロナ禍で世界ツアーが長期間休止する中、イベントの回数を増やして活動の幅を広げたという。

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「テニスにかかわらず、いろんなスポーツを通して、子どもたちが何かに打ち込む力、夢を持って取り組む力を育んでいきたい」(鮎川)

――鮎川選手が主宰しているスマイルテニスプロジェクトはどんな活動ですか?

「簡単に言えばテニスの普及活動です。以前から日本のテニス人口をもっともっと増やして、次につなげていかなければいけないと感じていました。そしてテニスに限らず、子どもたちには夢を持って何かに取り組んで欲しい。そのきっかけ作りを、自分が現役のうちからやっていきたいと思いました。具体的には、小学校の授業の一環としてテニス体育授業を行ったり、中学校のキャリア教育授業でプロテニスプレーヤーという職業について話したりしています」

――これまでの活動の中で印象に残っていることは?

「地元(千葉県野田市)の小学2年生のクラスでは、校庭に簡易コートを作って小さいラケットでテニスを体験してもらう授業をやりました。大半の子はテニスをしたことがなかったので基本的なボール遊びから始めたのですが、興味を持ってもらえば、子どもたちはあっという間にミニラリーまでできちゃうというのが印象的でした。

また、中学校のキャリア教育授業では、プロ選手になると実際にどういうスケジュールでどんな国にいって活動するのかを話したり、自分のラケットバッグの中身を紹介したりしました。その後、生徒全員が感想文を書いてくれたのですが、ランキング下位の選手は一人で遠征に行ったりしなければいけないことに驚いた、という声も多かったですね」

――このスマイルテニスプロジェクトの活動を始めるに至ったきっかけを教えてください。

「私はジュニアの頃から海外遠征が多かったのですが、東南アジアの貧困差の激しい国に行って現地の子どもたちを見たときに、自分のやりたいことをやれている環境はありがたいのだと気付かされました。日本は恵まれていますが、子どもたちが夢を持って何かに取り組む力を育むためには、私が得たさまざまな経験を伝えていく必要があると感じました。私はまだ現役なので、シーズン中はなかなか時間が作れないのですが、オフシーズンには多くイベントを企画して、子どもたちと接する機会を設けていきたいと思っています」

ケガをしたからこそ自分の弱いところに気付けた

12年に18歳でプロ転向した鮎川は、14年の東京有明国際女子オープンでITFツアー初優勝を果たし、全日本選手権では2年連続(2014、2015年)でベスト4入り。順調に実力をつけ、世界ランキングを400番台まで上げていった。しかし、プロ6年目の17年、鮎川はケガで戦線離脱を余儀なくされた。

鮎川真奈選手

16歳で出場した全豪オープンジュニアで、鮎川はトッププロたちと同じコートで練習する機会を得た。「あのとき私も(プロになって)絶対ここに戻ってきたいと強く思った」(鮎川)

――どんなケガだったのですか?

「右ヒザ前十字靱帯損傷で4カ月間コートに立てませんでした。不幸中の幸いで手術は免れたのですが、リハビリに時間がかかってしまって……。ランキングが1000番台まで落ちてしまい、失うものは何もないという状態になったときに、弱いところをもっと強くしていかなければいけないことに気付かされました」

――弱いところとは?

「一発で仕留めたり、ショートポイントで終わらせるのが自分の持ち味でもあるんですけど、それだけでなく、フットワークを強化してコートカバーリングを広くしたり、ケガをしにくい体を作るために徹底的にトレーニングしました」

――ケガから復帰後は、2018年のITF浜松ウイメンズオープンで準優勝するなど好成績をあげ、2019年7月にはこれまでの自己最高位となる382位を記録していますね。

「ケガをしたからこそ、気付けたことがあったので、それが翌年以降の結果につながったのだと思います」

――これまでに試合で厳しい局面を何度も乗り越えてきたと思いますが、実際に劣勢になった場面で、鮎川選手はどのようにプレーを立て直していますか?

「流れが相手に傾いているときは、何かをしなくちゃいけないと焦ったり、自分を責めたりしがちですが、私はやるべきことを一つか二つ決めて、それをやりきるようにしています。私のプレースタイルはとにかくファイトすることです。シンプルなことですけど、1球1球声を出すとか、必死で食らいつくとか、とにかく自分を鼓舞することが必要なので、そこにフォーカスしてやっています」

ジュニアの時期をいかに過ごすかが数年後に影響する

2020年に発生した新型コロナウイルスのパンデミックはテニス界に大きな影響を及ぼした。男女のプロツアーは春先から約5カ月間休止し、多くのプロ選手を経済的に、そして精神的に苦しめた。2017年のケガから復帰後にランキングを再上昇させていった鮎川にとっても、昨年は思わぬ停滞のシーズンとなった。

鮎川真奈選手

「プロテニス選手は一人でいろんなことをやらなければならないから、セルフマネジメント力がつく。これからもたくさん吸収して成長していきたい」(鮎川)

――昨年3月にツアーが停止しました。当時の心境は?

「3月中旬からチュニジアに4週間遠征に行く予定だったのですが、その出発前日にツアーの中止が言い渡されて、慌てて飛行機の予約をキャンセルしました。いい状態で準備できていたので本当にがっかりしましたし、この先どうしたらいいのだろう、と不安になりました。

ただ、テニスの調子は良かったので、気持ちの部分をメンタルトレーナーにサポートしてもらいながらモチベーションを維持して練習に取り組みました。また、筋力トレーニングやパフォーマンス向上のトレーニングをしたり、スマイルテニスプロジェクトの活動を行ったり、普段やれないことをたくさんやれた時間だったので、今となっては良かったかな、と思っています」

――今シーズンの目標を聞かせてください。

「(新型コロナウイルスの影響で)どうなるか分かりませんが、今シーズンの目標は来年のグランドスラムの予選に出るためにランキングを200位に持っていくことです。そのためにはITFの2万5000ドル大会で優勝したり、コンスタントに勝ち続けたりすることが必要です。自分の持ち味はハードヒットだったり、アグレッシブに前に出てネットでフィニッシュできるプレーだったり、サーブを生かしてショートポイントで決めるプレーです。それらの長所を伸ばすことと、そこに行くまでの展開の幅を広げたいと思っています」

――選手として目指すところは?

「グランドスラム本戦に出場することと、WTAの大会だけで転戦できる選手になることです。もう26歳ですからベテランの域に入っていきます。(20代前半の頃と比べて)体力の違いは感じるので、ここからは毎年をラストの年と思うくらいの気持ちで取り組みたいです」

――鮎川選手はジュニア強化の活動でジュニアの選手たちと接する機会も多いと思います。彼らも昨年は大会が中止になったり、思うような練習ができなかったり、つらい時期でした。ジュニア選手たちがこのコロナ禍を乗り越えていくためにアドバイスをお願いします。

「ジュニアは18歳までというリミットがある中で、2020年は路頭に迷ってしまった選手もいると思います。これは私自身も通ってきた道ですが、ジュニアの時期をいかに過ごすかが2年後、3年後に大きく影響してきます。だから、今の時間を無駄にしないで、目標をちゃんと立てて、そこに向かって毎日努力していくことが大切だと思います」

祖父母が経営するロイヤルSCテニスクラブで育った鮎川は、プロテニスプレーヤーになる、グランドスラムに出るという夢を追いかけ、ここまでたどり着いた。「自分としてはまだまだ納得いかない。この1、2年で勝負をかけてやっていきたい」という鮎川は、2月半ばのITFエジプト大会からプロ9年目のシーズンをスタートさせた。プロテニスプレーヤーという職業の魅力を多くの子どもたちに伝える夢の伝道者、鮎川自身の挑戦はこれからも続く。


鮎川真奈選手

鮎川真奈(あゆかわ・まな)

1994年生まれ。千葉県出身。身長170cm、体重64kg。18歳でプロ転向、2014年ITF東京大会単複優勝、全日本選手権単ベスト4。2015年全日本選手権単ベスト4。2018年ITF浜松大会単準優勝。世界ランク単562位、複268位(2021年1月25日付)。生涯獲得賞金額(単複合計)9万3ドル。エームサービス所属。


鮎川真奈選手の愛用ラケット

ヨネックス 「Eゾーン100」

「昨年末にEゾーン98からEゾーン100に替えました。100のほうが腕への負担が少ないことと、ボールをつかんでくれる感覚があること、そして、しっかり打っても最終的にはボールが落ちてくれるので、自信を持って打てます。私のようにファーストサーブをガツンと打って、3球目を前に入ってフラットで打っていくプレースタイルの方には、すごくオススメのラケットです」(鮎川)

鮎川真奈選手の愛用ラケット

(写真提供:鮎川真奈選手)

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岡田洋介
2021.02.26 17:00 投稿者:
岡田洋介
1968年、群馬県生まれ。出版社でスポーツ誌の編集職を経て独立。 スポーツライターとしてテニスのグランドスラム大会等の取材活動を行うほか、ゴルフ誌やランニング誌等に寄稿する。 2005年にテニスレッスン専門の動画配信サイト『テニスストリームTV(www.tennisstream.tv)』を立ち上げ、 テニス愛好者に役立つ上達情報を配信している。趣味の百名山登山は現在20座制覇! 【編集協力】『配球とコンビネーションで勝つテニスダブルス』(学研プラス)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研プラス)

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