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プロテニスプレーヤーへの道 ー輿石亜佑美の場合ー

2020.11.13|17:00|投稿者: 岡田洋介
プロテニスプレーヤーへの道 ー輿石亜佑美の場合ー

現在プロ2年目の輿石亜佑美は、高校2年の段階でジュニア大会を卒業し、プロになる前から国内外のITFツアー大会を回り始めた。中学生のころから、プロになるための道筋を明確に描いて、着実に成長を続けてきた輿石に、ジュニア時代の独自の歩みと、念願のプロテニスプレーヤーになった現在の心境を聞いた。

中2からJOP大会に参戦して高2でジュニアを卒業

輿石亜佑美は高校1年の4月にジュニアの主要大会の一つであるMUFGジュニア大会で準優勝するなど、国内ではトップジュニアの一人として認められる存在だった。しかし、彼女は同年代のトップ選手の多くが目指すITFジュニア大会(ジュニアの国際大会)にはほとんど出場せずに、プロや大学生選手たちに混じってJOP大会(日本テニス協会公認の賞金大会)へのチャレンジを続けていた。そんな輿石がジュニア大会の卒業を決めたのは、高校2年の夏だった。

本来のジュニア卒業年度である18歳のシーズンまで1年あまりを残してジュニア卒業を決めたのは、プロになるための実戦経験を、早い時期からより多く積むことが目的だったという。

輿石亜佑美選手

「ITFジュニアの大会に出るならジュニア大会を卒業する必要はなかったけど、私は早くプロの大会にシフトしてポイントを取りたかったので、高校2年でジュニア大会を卒業しました」(輿石)(写真提供:Project E.O)

――輿石選手が一般の大会に出始めたのはいつごろからですか?

「中学2年のときからJOP大会に出始めました。ITFジュニアはポイントを稼ぐためにたくさん試合を回らなくてはいけないので、資金的にも大変です。だから私は、JOP大会で大人の選手たちと試合をして経験を積んでいこうと考えました。これは当時教えてもらっていた右川コーチと両親と話し合って決めました」

――高校2年の夏にジュニアを卒業すると決めた経緯は?

「高校生になるとジュニア大会の他にインターハイ予選などたくさん試合があるので、どうしても一般の大会に出る時間が少なくなってしまいます。そこで、通っていた浦和麗明高校の校長先生に『高校2年のインターハイで優勝したらジュニアの大会には出ずに一般の大会に専念したいので、その分を公欠扱いにしてほしい』とお願いしました。結局、インターハイは優勝できずに準優勝だったのですが、校長先生に許可をいただけたので、その年でジュニアを卒業しました」

大人の試合に出始めて緩急を使ったプレーを覚えた

3歳から姉について近所のテニススクールに通い始めた輿石が「将来はプロになる」と強く意識し始めたのは、小学6年の時だったという。その年に出場した全国小学生大会で3位に入った後、輿石は当時のコーチの勧めで、ワンランク上のジュニアチーム「プラスアルファテニスカレッジ」に移籍した。そのジュニアチームを指導していたコーチの右川(旧姓山崎)史子は、かつて高校時代にインターハイを2連覇し、その後もインカレ、実業団の日本リーグなどで活躍してきた経歴を持つ。プロを目指したいという輿石に、右川は一般の大会に参加して大人を相手に多くの実戦経験を積むようアドバイスしたという。

輿石亜佑美選手

「両親は共働きなので、一人で行けないなら試合に出ない、という決まりがありました。だから、小学生のころから大会はほとんど一人で回っていました」(輿石)

――ジュニアの大会ならシード選手として優勝争いをできる位置でしたけど、大人の大会はそう簡単には勝てなかったですよね。ジュニア大会のほうが楽しかったのでは?

「たしかに勝てたほうが楽しいですけど、ジュニアの大会は一度好結果を出すと次も勝たないと、というプレッシャーが大きくなってしまいます。大人の大会なら、私はまだ挑戦者です。自分より強い選手しかいないので、チャレンジャーの気持ちで1戦1戦楽しむことができました」

――ジュニア選手のテニスとJOP大会に出場してくる大人の選手のテニスに何か違いを感じましたか?

「ジュニアはバンバン強打する子が結構多いのですが、細かい技術は大人の選手の方があります。ドロップショットやボレーはジュニアとは比べものにならないくらい上手い。中学のころは身長もまだ低かったし、パワーだけでは勝てなかったので、大人の試合に出始めてからは、スライスを使ったり、緩急を意識してプレーしたりするようになりました」

初めての海外遠征は一人。でも困ることはなかった

高校2年の12月、ジュニア最後の大会となった全日本ジュニア選抜室内で優勝した輿石は、翌年1月からITFツアー大会に本格参戦を開始。香港、韓国、シンガポール、台湾、オーストラリアなどに遠征し、プロの選手と同じスケジュールで国内外の大会を回り始めた。

輿石亜佑美選手

「(新型コロナウイルスの問題で)停止しているツアーが再開したら、これまでの最高ランキング(609位/2019年4月)より上を目指して頑張りたい」(輿石)(写真提供:Project E.O)

――遠征にはコーチと一緒に行ったのですか?

「最初はほとんど一人で回っていました。私は両親が共働きなので、小学生のころから、大会は一人で行けるところに自分で行くという決まりがありました。また、右川コーチは私以外のジュニア選手も指導していましたから、試合にはあまりついてこられなかったんです」

――海外遠征も一人で?

「たぶん香港の大会が初めての海外遠征でしたけど、その時は一人で行きました。アジア圏の大会だったら、日本の選手もたくさん出ています。私が海外の試合に出始めたころは先輩の選手たちがすごく気に掛けてくれて、部屋をシェアしてくれたり、食事に連れていってくれたりしたので、寂しさとかはあまり感じなかったです。私は食べ物の好き嫌いは全然ないし、おなかも丈夫なほうなので困ることはなかったです。

でも、海外遠征が増えてくると自分一人ではできなことも出てくるだろうし、プロになったら技術や戦術をもっと向上させていかなければいけない。ツアーコーチの力を借りて成長していきたいと思い、高校3年の終わりからプロツアーチームProject E.Oの西岡靖雄コーチのサポートを受けることにしました」

――プロの大会に本格的に出始めてから、テニスで成長したことは?

「私はどちらかというと守備的なプレースタイルが得意でした。ベースラインでしっかり打ち合って、ネットプレーは最後のチャンスボールくらいしか使わなかったのですが、プロ相手だと、守備だけではなかなかポイントが取れなくなりました。自分からポイントを取りにいく大切さをすごく感じてきたので、ボレーを練習して、サーブアンドボレーなどで自分からポイントを取りにいける展開を西岡コーチに教えてもらうようになりました」

2019年の春、高校を卒業した輿石は日本テニス協会にプロ登録申請を提出し、念願のプロテニスプレーヤーとなった。

プロは普段の生活態度も見られている

今年7月、埼玉県川口市にあるレイムテニスセンターで輿石のレッスンイベントが2日間開催された。浦和麗明高校時代から同テニスセンターのコートで練習を積んできた輿石は、イベントに参加したジュニアや大人のプレーヤーたちとマンツーマンラリーやゲームをして、地元でのイベントを大いに楽しんだ。

――地元のテニスクラブに帰ってくると、ジュニアの子たちからも注目されますね。

「そうですね。同じクラブ出身のプロって、すごく憧れる存在だと思います。私もジュニア時代は同じクラブの強いお姉さんたちに憧れていましたし、子どもたちは身近にいる強い選手を見て育つ面がありますから、私がしっかりしなければいけないな、と思います」

――昨年4月にプロ転向してから1年あまり経ちますが、「プロテニスプレーヤー」という肩書きには慣れましたか?

「昨年は高校を卒業したばかりで、プロといってもあまり実感はわかなかったんですけど、今は、プロテニスプレーヤーとしてきちんとしなければいけないな、という気持ちが出てきています。プロは観客に見てもらうのが仕事なので、テニスコートでの行いもそうですし、普段の生活態度も見られていると思って生活しなければいけないな、と思っています」

――プロ選手としての自覚が生まれてきている、ということですね。

「高校生のときも今とほぼ同じ生活をしていましたけど、気持ち的にはガラッと変わりました。テニスに生活がかかっているのがプロだと思うので、親に頼ってもいられない。自分で稼いでいかなきゃっていう気持ちが出てきたので、少しというか、かなりプレッシャーは感じています」

――最後に、輿石選手のこれからの目標を教えてください。

「自分の中では具体的な目標はまだ立てられていないんですけど、でも、プロになったからにはグランドスラム出場を目指して頑張りたいと思っています」

ジュニア時代から、プロになるための明確なプランを立てて、1歩ずつ着実にステップアップを続けてきた。輿石亜佑美、20歳。まだあどけなさの残る表情の裏に、芯の強さが見え隠れするファイターだ。


輿石亜佑美選手

輿石亜佑美(こしいし・あゆみ)

2000年生まれ。埼玉県出身。身長166cm。浦和麗明高校卒業後、18歳でプロに転向。2019年東京オープン優勝、ITFツアー韓国金泉大会複優勝。竜興化学工業所属。世界ランク単947位、複939位(2020年9月28日付)。生涯獲得賞金額(単複合計)1万4898ドル。


輿石亜佑美選手の愛用ラケット

ダンロップ 「SX300」

「前はダンロップのCX300を使っていました。CX300の方がスピードが出て鋭いショットが打てたんですけど、プロになってからプレースメントで勝負したいと思い、よりスピンがかけやすいSX300に替えました。」(輿石)

輿石亜佑美選手の愛用ラケット

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岡田洋介
2020.11.13 17:00 投稿者:
岡田洋介
1968年、群馬県生まれ。出版社でスポーツ誌の編集職を経て独立。 スポーツライターとしてテニスのグランドスラム大会等の取材活動を行うほか、ゴルフ誌やランニング誌等に寄稿する。 2005年にテニスレッスン専門の動画配信サイト『テニスストリームTV(www.tennisstream.tv)』を立ち上げ、 テニス愛好者に役立つ上達情報を配信している。趣味の百名山登山は現在20座制覇! 【編集協力】『配球とコンビネーションで勝つテニスダブルス』(学研プラス)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研プラス)

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