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全米学生トップ20に選ばれた福田詩織のNCAA挑戦記

2020.11.06|17:00|投稿者: 岡田洋介
全米学生トップ20に選ばれた福田詩織のNCAA挑戦記

ジュニア時代に日本のトップ選手として実績を挙げた福田詩織は、高校卒業後にプロ転向や国内の大学への進学はせず、米国の大学を進路に選んだ。ハイレベルなNCAAディビジョン1(全米大学体育協会1部リーグ)を舞台に活躍し、この春には全米学生トップ20に選出された福田詩織に、アメリカの大学テニスについて話を聞いた。

コロナ禍でシーズンが打ち切りになった後に届いた朗報

米国からグッドニュースが届いたのは、4月下旬のことだった。米国大学テニス協会(ITA)がNCAAディビジョン1のテニスチームで今シーズン活躍した女子選手に贈る2020 ITA Division Ⅰ Women All-Americans(以下、オールアメリカンズ賞)のシングルス部門に、一人の日本人選手が選ばれた。

本来であれば、この時期はシーズン最後のNCAA全米トーナメント出場を懸けた地区リーグ戦が佳境を迎えるころだったが、今年は新型コロナウイルスの影響で3月半ばに春シーズンが打ち切りになった。強豪オハイオ州立大学のシングルス1番手を務める福田詩織(以下、福田)は、一時帰国している日本でその朗報を受け取った。

福田詩織選手

オハイオ州立大学の女子テニスチームはNCAAディビジョン1に所属する強豪。2019-2020年シーズンは福田がシングルス一番手を務めた(写真提供:Project E.O)

――オールアメリカンズ賞は、NCAAディビジョン1に所属する全選手の中から、シングルス20名、ダブルス10組に与えられる名誉ある賞ですね。受賞した心境は?

「オハイオ州立大学の施設内にオールアメリカンズ賞に選ばれた選手一人ひとりを称えるバナーが掲示される場所があるんですけど、そこに名前が出るのが一つの目標でした。コロナでシーズンが途中で終わっちゃってどうなるか不安だったので、名前が発表されたときはうれしかったです。女子のテニスチームでは過去に4人の選手が受賞していて、私で5人目でした」

――NCAAでは今季シングルスで24勝7敗、ダブルスで12勝10敗という戦績でした。振り返ってみていかがでしたか?

「昨年の6月にITF韓国金泉大会(賞金総額1万5000ドル)で優勝できたことが自信になって、秋季チャンピオンシップでベスト8までいって全米学生ランキングも自己最高位の8位になりました。トップ10に入った位置で1月からスタートできたので、コロナでシーズンがなくなってしまったのが悔やまれます」

――今シーズンで一番印象に残っている試合は?

「毎試合すごい印象に残っているんですけど、3月上旬に行われたノースウエスタン大学のジュリー・バーンという選手との試合もその一つですね。同地区ビッグ・テン・カンファレンスの一番手同士で、過去3回連続で負けていた相手でした。コロナじゃなかったら全国大会で優勝するのが今シーズンの目標でしたから、そのためには絶対に負けられない試合だったし、私の試合結果がチームの勝敗を左右する状況だったので、すごい気合いを入れてやって、6-3、3-6、6-3で勝てました。3年間トレーニングを頑張ってきた成果が出せたんじゃないかな。そして結果的に、あの試合が今シーズン最後になってしまいました」

東京五輪出場を目指してアメリカの大学進学を決意

福田はジュニア時代、日本のトップで活躍した選手だ。14歳のときにU15全国選抜ジュニア(中牟田杯)で優勝し、16歳で全豪オープンジュニアに初出場。また同年に大阪で行われた世界スーパージュニアではベスト8まで進んだ。「これならプロになれる」と考えていた福田に迷いが生じ始めたのは、ジュニアの最終学年に入ったころだったという。

福田詩織選手

大学内にはテニスチーム専用のテニスコート(屋外8面、インドア6面)がある。テニスチームの練習は1日最大2時間半(写真提供:Project E.O)

――どのような心境の変化があったのですか?

「ジュニアの全国大会で勝てるようになってから周囲の期待も高くなり、自分でも負けられないって思うようになって、テニスがあまり楽しくなくなっちゃったんです。ここでプレッシャーを感じていたらプロは厳しいかなと思ったんですけど、それでも自分の中のいろんな葛藤を克服して、最後の全日本ジュニア(18歳以下)で優勝できたらプロになろうと思って、大会に臨みました」

――それで全日本ジュニアの結果は?

「準々決勝で負けちゃいました。第4シードをもらっていたし、目標は優勝です。まさか自分が準々決勝で負けるとは思っていませんから相当ショックで、そこで一度プロは諦めました。テニスをやめることも考えたのですが、せっかく7歳から始めて、いろんなことを犠牲にして頑張ってきたのに、こんな中途半端なかたちで終わらせたくないと思い直し、テニスを続けることにしました」

――そのころからアメリカの大学でテニスをすることを考えていたのですか?

「アメリカの大学のことは正直知らなくて、日本の大学に進んで体育会でテニスを続けようか、もうちょっと楽しくテニスをしようか迷っていました。そんな時期に、コーチの渡部健介さんからアメリカの大学の話を聞きました。渡部さん自身もアメリカの大学を卒業していて『詩織の性格からいって向こうで自由にテニスしたほうがいいんじゃないか』と言ってくれたんです。

また、テニスをもう一回頑張ろうと思うきっかけになったのは、2020年の東京オリンピックです。母国でオリンピックが開催されて、自分がすごく頑張れば出場できるかもしれない。可能性があるのにまったくチャレンジしなかったら、たぶん後悔するだろうな、と思ったんです。アメリカの大学は勉強もそうですけど、スポーツにもすごく力を入れていると聞いたので、そこでしっかりトレーニングすれば(東京五輪出場の)チャンスもあると考えました」

――アメリカの大学の中からオハイオ州立大学を選んだ理由は?

「最初、私はテキサスの大学を考えていました。スカラシップ(奨学金)枠を得るために必要な語学試験の点数が大学によって違うのですが、テキサスの大学なら必要な点数は持っていましたから、この大学に決めようと思っていたんです。

でも、アメリカの大学には、移動や宿泊の経費を全額大学側が負担して奨学生候補に大学訪問させる『48時間訪問』という制度があるんですけど、その制度を利用してオハイオ州立大学に行ったときに、テニスチームのコーチがすごくいい人で、選手たちもいい人で、大学のあるコロンバスという街もすごくいいところで、気持ちが変わりました。

語学試験であと数十点取れれば、オハイオ州立大学にフルスカラシップ(全額奨学金)枠で行ける。これは勉強を頑張る価値があるんじゃないか、と思ったんです。それでも入学予定の9月には点数がちょっと足りなくて、結果的に翌年の1月にオハイオ州立大学に入学しました」

NCAAシーズン中は移動中の空港や機内で勉強

大学入学年度はNCAAでプレーしないことを選択(※1)した福田は、翌年(NCAA1年目)にシングルスで23勝10敗という好成績をあげ、NCAAディビジョン1ビッグ・テン・カンファレンスの最優秀新人賞を獲得した。「自分がどのレベルにいるかを知るためにプロの大会に挑戦した」という福田は、NCAA2年目シーズン終了後の昨年6月から9月にかけてITF5大会に出場した。3戦目のITF韓国金泉大会で優勝し、一度はあきらめたプロの道が再び開けたかと思いきや、福田は自分の実力を冷静に見極めて将来を考えていたという。

福田詩織選手

「日本とアメリカの大学テニスはプレースタイルが違うので単純比較はできないけど、アメリカのトップ選手はパワーがあるし、レベルも少しだけ高いかな、と思います」

――いま、プロになりたいという気持ちは?

「相当な覚悟がないとプロにはなれません。昨年の夏にITFの大会をいくつか回ったんですけど、プロはああいう地味な大会に勝っていかないと上が見えない過酷な世界です。やるならトップで活躍したいけど、そのためにはどんな国でも行かなければならないし、家族とも会えない。テニスは好きだけど、これ以上いろんなことを犠牲にしてまで頑張れる気持ちは、たぶん自分にはないなと思って、いまはプロになるというより、違うかたちでテニスに関われればいいなと思っています」

――アメリカの大学は勉強も大変だと聞きますが、実際にどうでしたか?

「かなり厳しいです。なんでこんなに苦しまなきゃいけないんだろうって思うときもありますよ。でも、アメリカの大学生は勉強するのが当たり前だし、チーム内でも自分だけ低い成績を言うのが嫌だったから、NCAAのシーズン中も移動中の空港で勉強したり、機内で勉強したりしました。大変ですけど、お金では買えない経験がたくさんできたし、私はフルスカラシップで学費は一切払わずにハイレベルな教育を受けることもできました。もし、もう一度高校3年のころに戻って進路を迫られても、たぶん同じ選択(アメリカの大学進学)をするんじゃないかな、と思います」

――この夏で大学4年目が終わりますが、その後は?

「大学は卒業して、大学院に進学する予定です。私はNCAAであと2年プレーできる権利があるので、大学院でもスチューデントアスリートとしてテニスを頑張りたいと思っています」

「アメリカの大学に行ってすごく良かった」と言う福田はこの夏、子どものころから抱いてきた夢とは違う道を目指して歩み出した。「ジュニア卒業後の進路としてアメリカの大学を選ぶ選手はまだ少ないですけど、こんなにいい選択肢があることを知れば、たぶんみんな一生懸命に勉強すると思う。そういうことも伝えていきたいです」。オハイオ州立大学テニスチームのナンバーワン選手としてNCAAで名を残す活躍を見せた福田の目には、高校時代のような迷いはもうなかった。

※1=1年間公式ゲームには出られず(チーム練習には参加できる)、プレーの成績も残らない代わりに、その学年のまま次のシーズンもプレーが許される制度


福田詩織選手

福田詩織(ふくだ・しおり)

1997年生まれ。島根県出身。身長169cm。12年U15全国選抜ジュニア優勝。14年全豪オープンジュニア出場、世界スーパージュニアベスト8。高校卒業後に米国オハイオ州立大学に進学。19年ITFツアー韓国金泉大会単優勝。20年ITA Division Ⅰ Women All-Americans受賞。Project E.O所属

Instagram:https://www.instagram.com/shishi.17/


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岡田洋介
2020.11.06 17:00 投稿者:
岡田洋介
1968年、群馬県生まれ。出版社でスポーツ誌の編集職を経て独立。 スポーツライターとしてテニスのグランドスラム大会等の取材活動を行うほか、ゴルフ誌やランニング誌等に寄稿する。 2005年にテニスレッスン専門の動画配信サイト『テニスストリームTV(www.tennisstream.tv)』を立ち上げ、 テニス愛好者に役立つ上達情報を配信している。趣味の百名山登山は現在20座制覇! 【編集協力】『配球とコンビネーションで勝つテニスダブルス』(学研プラス)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研プラス)

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