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42歳のチャレンジャー松井俊英のプロ人生20年ストーリー

2020.10.09|17:00|投稿者: 岡田洋介
42歳のチャレンジャー松井俊英のプロ人生20年ストーリー

松井俊英は、プロ人生の半ばを過ぎてから、プロテニスプレーヤーとしての進路を大きく方向転換したという。20代の松井俊英はどこを目指していたのか。なぜ、30代半ばを過ぎてダブルスに専念しはじめたのかーー。過去と今、そして目指す未来を42歳の松井俊英に聞いた。

スポンサーから初めてもらった契約料が月6万円

松井俊英(以下、松井)が22歳でプロに転向した2000年当時は、まだ日本全体に閉塞感が漂っていた時期だった。

国内経済はバブル崩壊後の平成不況から脱しきれず、リストラ対策の一環として社会人野球や実業団バレーボールなど企業チームの休廃部が相次いだ。また、長らく男子テニスを牽引してきた松岡修造が1998年に引退し、世界ランキングのトップ100から日本男子選手の名が消えた。スター不在となった男子テニス界では、ランキング上位のひと握りの選手にしか大手スポンサーは付かなくなり、多くのプロ選手が経済的に困窮した。

松井俊英

「プロになった当時は、どこの大会に行けばポイントを取りやすいとか全然分からなかった」

――松井選手はプロ転向2年目には国内トップ10入りしましたが、当時のスポンサーは?

「最初はスポンサーなしで国内大会の賞金だけでやっていました。でも、やっぱり心の片隅にはグランドスラムに出たいという思いがあったので、海外の試合に行くためにスポンサーを探しました。

それで最初のスポンサーにもらったのがいくらだと思いますか。6万円ですよ。バイトコーチか! と思ったんですけど、6万円で遠征は無理だから、その会社のオーナーにお願いして半年分を前借りしたんです。その36万円を握りしめてトルコとインドネシアに遠征に行きました。」

――当時のITF大会の賞金はどれくらいでしたか?

「ベスト8に入っても300ドル程度でした。でも、その遠征でかかった費用を全部計算したら40万円くらい。これじゃ食っていけないな、と思いましたね、そのときは(笑)」

20代のころの松井は、プロとして生活していくために国内の賞金大会に出まくり、実業団の日本リーグに積極的に参加した。また、全日本選手権ではシングルスで4年連続ベスト4以上(2004~2007年、2006年は準優勝)、ダブルスでは岩淵聡とのペアで4度優勝(2005、2007、2008、2009年)という実績を残し、国内ではトッププレーヤーとして名を知られる存在となった。その一方で、世界ランキングはシングルスが2006年(松井28歳)に記録した261位、ダブルスは2004年(松井26歳)231位が最高位のまま、松井は30代の中堅選手になっていた。

プロとして生活していくために国内の大会を優先

松井は20代の頃を振り返って「僕らの世代は(松岡)修造さんの影響を一番受けていないんですよ」と言った。

松井俊英

「ケトジェニックダイエットをしてみたり、ケトン値を測ったりして自分の身体で実験しています。今、体脂肪率は9%くらいじゃないですか」

――それはどういう意味ですか?

「僕がプロになったのは、修造さんが現役を引退して修造チャレンジ(※1)をスタートさせたころです。先輩の選手たちはデ杯の日本代表チームとかで修造さんの影響を受けているので、世界を回ってランキングを上げてグランドスラムに出る、というビジョンを持っていたと思います。また、添田(豪)選手や錦織(圭)選手といった僕より下の修造チャレンジで育った世代は、世界で勝ってなんぼだ、という教えを受けているから、世界で勝つためにIMGアカデミーに行くとかボブ・ブレッド氏のような有名コーチを呼んで練習するという考え方をしています。

でも、修造さんとの関わりが薄い僕らの世代は、僕だけかもしれないけど、とにかく飯を食うために国内大会で賞金を稼ぐこと、イベントとか営業とかスポンサーとか、そういうことと海外遠征を両立させようとしていました。いま振り返れば、世界へのチャレンジの仕方が甘かったと思うこともあるけど、当時はそれが精一杯だったから」

2005年、プロ6年目の松井は北京で行われたATPツアーのチャイナオープン2回戦で当時世界8位のギリェルモ・コリアと対戦した。

――コリアといえば、2004年全仏オープンで準優勝したクレーのスペシャリストですね。結果は?

「1-6、0-6で吹っ飛ばされました(笑)。僕が27歳でちょうど脂の乗ったときでしたけど、全然レベルが違ったから、シングルスはノーチャンスかな、と思いました。でも、日本では2位(翌年に全日本選手権シングルスで準優勝)になっているし、デ杯代表にもなっているし、ウインブルドンの予選に出られたり、トップ100前後の選手には勝てていたが、良いパフォーマンスをコンスタントに維持するのが難しかった。(世界では通用しないという)葛藤を抱えながらも、しつこくシングルスにトライしました」

2013年、35歳となった松井はダナイ・ウドムチョクとのペアでATPチャレンジャー北京大会に優勝し、ダブルスの世界ランクを久しぶりに200位台に戻した。2014年には22歳の内山靖崇と組んでATPチャレンジャー豊田大会に勝ち、2015年にはダブルスの世界ランクで200位のカベを突破した。

20代のころ、いつかはグランドスラムへ、という思いを抱きながらもプロとして生活していくために国内の大会を優先してきた松井は、30代半ばを過ぎたころ、ダブルスなら世界に通用するかもしれない、という思いを強く抱くようになった。

42歳の自分でも全仏チャンピオンに勝てる

30代後半からダブルスをメインに精力的に世界ツアーを回り始めた松井は、2018年にはダブルスで自己最高位となる世界ランク130位を記録した。また、その年の12月には上杉海斗とのペアでアジアパシフィックワイルドカードプレーオフに出場。翌月に開幕する全豪オープンの本戦出場権を賭けたその大会で松井/上杉ペアは準優勝し、グランドスラム初出場まであと1歩のところまでいった。

2020年1月、24カ国の国別対抗戦ATPカップの日本代表チームに招集された松井は、マクナマラン勉とのペアでダブルスに出場し、ウルグアイのアリエル・ベハール/パブロ・クエバスに7-6、6-4で勝利した。

松井俊英

「今からシングルスでグランドスラムを目指します、と言ったらほら吹きみたいになっちゃうけど、ダブルスなら絶対に行けると思う」

――ATPカップは久しぶりの日本代表としての試合でしたが、どうでしたか?

「僕が勝った(パブロ・)クエバスという選手は2008年の全仏オープン男子ダブルス優勝者ですけど、ダブルスならトップ選手と実力差があるわけじゃないんですよ。たとえばシングルスなら、42歳の選手が全仏チャンピオンの(ラファエル・)ナダルと試合したら多分1ゲームも取れないですよ。でもダブルスなら、42歳の自分だって全仏チャンピオンに勝てる。僕はそこにチャンスがあると思っています。

今からシングルスでグランドスラムを目指します、と言ったらほら吹きみたいになっちゃうけど、ダブルスなら絶対に行けると思います」

――プレーの中で、自分の年齢を感じることはありますか?

「僕はフィーリングもテニス自体も上手くなっている気がします。40代になると回復力が悪くなるといわれるけど、用具や食事を変えたりすると意外と持つ。去年、シングルスで20代の選手に勝ったときは、もう1回シングルスで上を目指せるんじゃないかって感じましたよ(笑)」

昨年、松井はダブルスの合間に出場したシングルスで想定外の勝利を重ねてATPポイントを獲得し、「現役最年長ATPシングルス世界ランカー」という称号を手にしていた。そんなテニス界の鉄人が、このインタビュー中にぽろっと本音を漏らしたことがあった。

「やっぱり遠征はキツいんですよ。毎週中国に行って、食事も不味かったり、脂っこかったり…」

新型コロナウイルスの問題で今年の春以降のツアーが停止している間、松井は日本で家族と過ごしていた。「家にいられるのが楽しくて楽しくて…」という彼の言葉に、プロテニスプレーヤーという職業の厳しさ、世界を回り続けることの大変さを感じた。それでも松井は、ツアーが再開すればふたたび世界に出て行くだろう。40代でのグランドスラム本戦初出場という新たな称号を目指してーー。

※1=松岡修造が主宰するトップジュニア育成プロジェクト


松井俊英

松井俊英(まつい・としひで)

1978年生まれ。千葉県出身。米国ブリガム・ヤング大学ハワイ卒業後にプロ転向。ATPチャレンジャー複10勝。デ杯日本代表(2006年、2010年)。ASIA PARTNERSHIP FUND GROUP所属。世界ランク単771位、複185位(2020年3月16日付)。生涯獲得賞金額(単複合計)33万3057ドル。「ロット」イメージキャラクター。

松井俊英オフィシャルサイト:https://toshihide-matsui.jp/index.html
Twitter:https://twitter.com/matsuitoshihide
Instagram:https://www.instagram.com/toshihidematsui/


松井俊英の愛用アパレル

LOTTO(ロット)

松井は昨年、イタリアのスポーツアパレルブランド「ロット」のイメージキャラクターに就任。「ウエアはシンプルなデザインで、汗をかいても着心地がいいです。なんと言ってもイタリアブランドだから、ベテランのテニスプレーヤーに似合うと思います。また、オススメはソックスです。何回洗っても生地が伸びずにずっとホールド感があるので、とても気に入っています」(松井)

LOTTO:http://www.lottosport.jp/

松井俊英の愛用アパレル:LOTTO(ロット)

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岡田洋介
2020.10.09 17:00 投稿者:
岡田洋介
1968年、群馬県生まれ。出版社でスポーツ誌の編集職を経て独立。 スポーツライターとしてテニスのグランドスラム大会等の取材活動を行うほか、ゴルフ誌やランニング誌等に寄稿する。 2005年にテニスレッスン専門の動画配信サイト『テニスストリームTV(www.tennisstream.tv)』を立ち上げ、 テニス愛好者に役立つ上達情報を配信している。趣味の百名山登山は現在20座制覇! 【編集協力】『配球とコンビネーションで勝つテニスダブルス』(学研プラス)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研プラス)

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