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コーチと二人三脚で世界を目指す小堀桃子、プロ3年目の初挑戦

2020.08.21|17:00|投稿者: 岡田洋介
コーチと二人三脚で世界を目指す小堀桃子、プロ3年目の初挑戦

プロ1年目はWTA最終ランキング378位、2年目は同250位と順調にステップアップしていた小堀桃子は、プロ3年目の昨年、大会スケジュールを大幅に変更した。その結果、同326位と順位の上では停滞したが、大きな収穫を得たという。スケジュール変更の狙いとは何だったのか。小堀本人と井上明里コーチに聞いた。

予選出場のわずかな可能性に賭けて約1万1千キロを移動

昨年6月、小堀桃子はコーチの井上明里とともにインドネシアのジャカルタから英国ロンドンへ飛んだ。ジャカルタからロンドンまでは、距離にして約1万1千キロ、フライト時間は16時間もかかる長旅だ。その日、小堀は出場していたITFツアーのジャカルタ大会で準決勝敗退を喫していた。連戦の疲れを癒やす間もなく、慌ただしくロンドンへ渡った理由は、ウィンブルドン予選の補欠(※1)としてサインをするためだった。ロンドンへ渡った小堀が予選会場のローハンプトンに着いたのは、予選初日の2日前だった。

※1=予選開始前に欠員が生じた場合に補充される選手

ウィンブルドンなどのグランドスラム大会はシングルス本戦128ドローで行われる。128枠のうち、本戦ダイレクトインできるのはランキング上位104名と主催者推薦8名で、残りの16枠をかけて大会前週までに予選が行われる。その予選にも出場枠(128)があり、ウィンブルドンの大会エントリー締め切り時点でWTAランキング254位だった小堀は予選の出場権をぎりぎり得られなかった。

だが、連戦の続くツアーでは大会直前のケガや体調不良で出場を取りやめる選手も少なくなく、欠場者が出たら補欠リストからランキング順に出場権が回ってくる。欠場者が出るかどうかは大会初日の朝にならなければ分からないが、その時に会場で待機していなければチャンスはない。小堀は予選出場のわずかな可能性に賭け、東南アジアから英国へ遠征費をかけて移動してきたのだった。

小堀桃子選手

「(グランドスラム大会は)もちろん出たいけど、出たら目標達成みたいなものではないです」(小堀)

――ウィンブルドン予選の補欠リストにサインをしに行こうと決めたのはいつ?

「最終的にはインドネシアの試合が終わった時点ですが、その前から出られる可能性があれば行こうと考えていました。ただ、当日インターネットで飛行機のチケットを取ろうと井上コーチが何度もトライしてくれたのですが、決済がうまくできず、直接行っちゃえ! という勢いで、夜、空港に行き、やっとチケットが買えました」(小堀)

――予選に出られる保証がない状況で、経費や日数をかけてロンドンまで行く決断をするのは、すごいですね。

「もちろんその時のランキングによりますが、行くときは10番アウト(予選枠から外れた選手で10番目)の位置でしたから、井上コーチと相談して決めました」(小堀)

――ウィンブルドン予選の会場に行って補欠のサインをした時点では何番目?

「補欠のサインに来た選手は3人で私は3番目でした」(小堀)

――では、3人欠場者が出れば出場権を得られるというわけですね。で、結果的には?

「結局、予選に出る選手は誰もキャンセルしなかったので、会場でプレーすることはできませんでした。でも、出られなくてもそんなにがっかりしなかったですね」(小堀)

海外大会を増やし、体力的にシビアなスケジュールに変更

「グランドスラム大会への憧れはそれほどない」という小堀にとって、ローハンプトンは初めて訪れたグランドスラム予選の会場だった。四大大会の中でもウィンブルドンは唯一、予選会場と本戦会場が異なる大会だが、実際に現地で綺麗に整備された芝のコートを見たり、予選会場の雰囲気を味わったりした小堀は、次第に「このコートで試合がしたい」という気分になったという。

小堀はジュニア時代には全日本ジュニア(16歳以下単、18歳以下単)やインターハイ(単)など数多くのタイトルを獲得し、高校卒業後に18歳でプロに転向した選手だ。プロ1年目はWTAランキング378位、2年目は250位と順調にステップアップし、3年目の2019年序盤には自己最高位の226位まで順位を上げていた。

プロに転向して間もない選手というと、大きなラケットバッグを担いで一人で世界各国の下部ツアー大会を転戦して回るイメージがあるが、小堀にそのイメージは当てはまらない。「ツアー生活は好きか?」という質問に対して「たとえばプロを引退して、それでも世界を旅して回りたいかと言われたら、別にいいです、という感じです」と小堀は言う。実際に小堀がプロ入り後の2年間に出場したツアー大会の内訳を見ると、その7割(全44大会中29大会)が国内で開催された大会だった。

そんな国内指向の小堀に対して、コーチの井上はある課題を課して、プロ3年目のシーズンに臨ませた。

小堀桃子選手

「試合になるとテニス会場とホテルを移動するだけですけど、そのなかで井上コーチが食事など気を遣ってくれているので、ツアーを回る生活が嫌だという感じではありません」(小堀)

――小堀選手の課題とは?

「技術的にはトップの選手とそこまで大差はないと思いますが、一番の課題はフィジカル面です。フィジカルをどこまで上位の選手たちに近づけられるかが課題です」(井上)

――フィジカルの強化というのは具体的には?

「簡単に言えば試合をやりきる体力です。ツアーを回る選手は試合が1週間、1カ月、半年、1年と続きますから、移動の負担も含めてツアーを1年間回り続ける体力が必要になってきます」(井上)

――その体力をつけるために、あえて大会スケジュールを変更した?

「はい、できるだけ海外に出るようにして体力的にちょっとシビアなスケジュールを小堀に体感させました。上位の選手にとってはそれが普通なんですけど、小堀はそれまで国内の試合が多かったので。また、地域(アジア、ヨーロッパ、豪州など)によって戦い方が変わってくるので、それを学ばせる狙いもありました」(井上)

小堀がこれから戦うべき場所に行かせることが大切

スケジュールを大幅に変更して臨んだ2019年シーズン、小堀は結果的にプロ3年間で最多となる28大会に出場した。その地域別内訳は日本が13、日本以外のアジアが9、豪州が2、北米が4となり、海外の大会が過半数を占めた。

小堀桃子選手

「2、3年後? まあ、行けるだけ行くという感じです」(小堀)

――6月にウィンブルドン予選を目指してジャカルタからロンドンへ移動したのも、フィジカル面の強化のため?

「それもありますし、会場の雰囲気を味わわせたいという気持ちもありました。グランドスラムに出たいと思っていても、どういう場所でどういう選手が戦っているのか、というのを本人が知らないことには出場できないと思います。会場に行って“全然いける!”と思うか“だめだ”と思うかは本人次第ですけど、まずは上位の選手たちがいる場所、小堀がこれから戦うべき場所に行かせることが大切だと考えました」(井上)

――ウィンブルドン予選は結局出られなかったが、小堀選手本人は「そんなにがっかりしなかった」と言っていました。

「彼女はタイプ的にそういう選手なのでそこまで求めていません(笑)。私としては(グランドスラム予選会場は)こういうところだよ、あなたはここに行きたいんでしょ、ということを伝えたかったです」(井上)

大会スケジュールを大幅に変更して臨んだ2019年、小堀は結果的にITFツアーでは単複とも無冠に終わり、WTA最終ランキングは326位(単)にとどまった。しかし、試合をして、次の国へ移動をして試合をして、また次の国へ行って試合をして、というツアー選手らしいタフな生活にプロ3年目で初めて挑み、1月から11月まで通してフル参戦したことで、小堀がフィジカル的にひと回り成長したことは間違いない。国内指向から海外指向へとツアースケジュールを切り替えた小堀は、これからも井上コーチとの二人三脚でチャレンジを続けていく。


小堀桃子選手

小堀桃子(こぼり・ももこ)

1998年生まれ。埼玉県出身。158cm、50kg。2018年島津全日本単複優勝、ITF軽井沢大会単複優勝、ITF牧之原大会単優勝。2019年全日本選手権混合複優勝。橋本総業ホールディングス所属。世界ランク単327位、複295位(2020年4月22日付)。生涯獲得賞金額(単複合計)8万8082ドル。


小堀桃子選手の愛用ラケット

ダンロップ「CX200 ジャパンリミテッド」

「このラケットの打感が気に入っていて、ずっと同じモデルを使っています。フレームも厚いのではなく細いほうが好きですね」(小堀)

ダンロップ「CX200 ジャパンリミテッド」

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岡田洋介
2020.08.21 17:00 投稿者:
岡田洋介
1968年、群馬県生まれ。出版社でスポーツ誌の編集職を経て独立。 スポーツライターとしてテニスのグランドスラム大会等の取材活動を行うほか、ゴルフ誌やランニング誌等に寄稿する。 2005年にテニスレッスン専門の動画配信サイト『テニスストリームTV(www.tennisstream.tv)』を立ち上げ、 テニス愛好者に役立つ上達情報を配信している。趣味の百名山登山は現在20座制覇! 【編集協力】『配球とコンビネーションで勝つテニスダブルス』(学研プラス)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研プラス)

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