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昨年プロ転向した期待の19歳、田島尚輝の強さの原点をさぐる

2020.08.05|17:00|投稿者: 岡田洋介
昨年プロ転向した期待の19歳、田島尚輝の強さの原点をさぐる

田島尚輝は、近い将来にグランドスラムの舞台での活躍が期待される若手男子選手の一人だ。プロに転向して1年、フランスの名門アカデミーを拠点にしてツアーを転戦する田島のプロ活動を支えているのが、ジュニア時代に所属したチームヨネザワでの海外遠征の経験だった。

将来のナショナルチーム入りを期待されるホープ

今年6月、日本テニス協会(JTA)は2020年後期の男女ナショナルメンバーを発表し、同時に男女ユースチームの強化メンバーを選出した。ユースチームとは、将来的にナショナルチームに入る実力を有する若手選手枠という位置づけで、19歳の田島尚輝は昨年から継続してユースチームのメンバーに選ばれた。

田島は、ジュニア最終年の2018年全仏オープンジュニアで男子ダブルス優勝を果たし、同年のユースオリンピックでは内藤祐希と組んだ混合ダブルスで金メダルを獲得した。強力なサーブと俊敏なフットワークを武器に、体格に勝る外国人選手と互角に渡り合えるのが田島の魅力だ。そんな彼の強さの原点は、小学生のころから毎年参加してきたチームヨネザワの海外遠征にあった。

田島選手

「小学2年生のときに全豪オープンを生で見に行った。センターコートでフェデラーの試合を見て、僕もここでやりたいと思った」(田島)

ジュニア時代の錦織圭を育てた米沢徹が主宰するチームヨネザワでは、年に2回の海外遠征を軸とした独自のプログラムで選手育成を行っている。「素晴らしい吸収力がある一方、きめ細やかな指導が必要なゴールデンエイジ(10〜12歳)の選手たちに、正しい環境と指導を与えて、基礎となる能力をつける」という活動方針のもと、米沢は、夏はヨーロッパ各地へ、冬は米国フロリダへジュニア選手を連れて行って、現地で試合経験を積ませている。

――田島選手がチームヨネザワの海外遠征に参加したのはいつごろから?

「小学校3年生の3月にチームヨネザワに入り、海外遠征はたしか4年生から行きました。その遠征に参加させてもらえたことは、すごく大きかったと、今でも思います」

――大きかったとは?

「普通は小学生のころから1カ月も親元を離れて生活することはありません。(遠征の)金額は安いわけではないし、親には感謝して行かせてもらっていましたが、親から離れて外国人が周りにいる世界で生活した経験が、(海外を転戦する生活となった)今になって生きていると思います」

田島選手

「一番自信を持っているのはサーブとフットワーク。この身長(175cm)のわりにはスピードもあるし、エースも取れる。最近はサーブからの展開を意識してプレーしています」(田島)

プロを目指していたので海外遠征は苦じゃなかった

チームヨネザワの夏のヨーロッパ遠征は、長いときには40日近くに及ぶこともあった。「ヨーロッパは車で隣の国にすぐ行けるので、いろんな国の大会に参加しやすい」という米沢は毎年、クロアチアのザグレブやハンガリーのブダペストなどを拠点にして小中学生のジュニア選手たちと共同生活を行いながらヨーロッパ各地で行われているジュニア大会に選手を参加させた。米沢は、現地での様子を毎日ブログに書き綴っていた。以下は、田島が10歳の夏(2011年5~7月)に行われたヨーロッパ遠征時に記されたブログ日記から抜粋した内容だ。

2011年6月、田島(前列右・当時10歳)はチームヨネザワのヨーロッパ遠征に参加してテニスヨーロッパ12歳以下に出場した

6月30日 Day31

ザグレブでのいつもの1日だった。朝から基礎練習、そして午後はクロアチアの選手との試合、夕方はランニングで追い込んだ。追い込みでは今までの積み重ねが効いてきている。それぞれ最高の走りを見せた。合計70本ほどのダッシュを行ったが、それぞれの心拍数の限界まで追い込めるようになってきている。

ブダペストで開催されているテニスヨーロッパ12歳以下の準決勝の田島尚輝はハンガリーの一番の選手に0-6、0-6の完敗だった。「相手はミスをしないので無理に攻めすぎた」と尚輝。帯同中のレビーコーチは「実力には差はないがハンガリーの選手はあまり攻めないで勝つテニスなので崩すのは難しい相手だった。ヨーロッパでもトップの選手」とのこと。

試合を終えた12歳組は夕方ザグレブに戻り、久ぶりに皆と合流、楽しく夕食をとった。家族が帰って来たような雰囲気でにぎやかな夕食会だった。明日12歳組以外は朝追い込みを行って午後は皆でクロアチアのビーチに行く予定だ。

(米沢徹オフィシャルブログより https://tennis.jp/toru-yonezawa/

――1カ月も海外で生活するのは大変だったのでは?

「小学校2年生のときにオーストラリアに全豪オープンを見に行って、センターコートで(ロジャー)フェデラーの試合を見て、僕もここでやりたいな、と思った。プロになりたい、プロになるなら遠征に行く、だったので、別に海外遠征は苦じゃなかったし、楽しかった思い出のほうが強いです」

田島選手

「チームヨネザワは他のスクールに比べたら練習量がはるかに多いから、基礎体力が上がったし、精神的な部分も強くなったのではないかと思います」(田島)

――海外遠征の他にチームヨネザワで学んだことは?

「僕が小学生のときは学校のある日は夕方5時ごろから9時ごろまで練習をやっていました。当時の練習場所は自宅から遠く、基本的に親の送迎はないので、一人で電車に乗って練習に通っていました。練習の後、帰りの電車で寝過ごして知らない駅に行ってしまうこともよくあった。そういった部分も、自分が強くなれた要因だと思います(笑)」

ストローク力を強化して将来は世界のトップ30に

ジュニアを卒業後、2019年のシーズンから世界ツアーを回り始めた田島は、プロ選手としての活動拠点をフランスのニースにあるムラトグルアカデミーに移した。セレナ・ウイリアムスのコーチとして知られるパトリック・ムラトグルが創設した名門テニスアカデミーだ。

――ムラトグルアカデミーに拠点を移した理由は?

「僕はプレースタイル的にクレーコートが合っているのでプロになったら海外で練習するのがいい、とアドバイスを受けていて、ジュニア時代に世界を回りながらいろいろなアカデミーを見て回ったなかで、生活していくのはそこがいいのではないかと思いました」

――昨シーズンはどれくらい海外に出ていた?

「4月にフランスに行ってから、途中8月に四日市チャレンジャーに出るために2週間くらい帰国したけど、その後は11月末までほぼ海外にいました。ジュニアのころは、遠征は長くて3カ月くらいだったので、そんなに長い海外生活は初めてでした」

――ジュニア時代の海外遠征とプロになってからの海外生活に違いは?

「やっぱりチームヨネザワで行った遠征のほうが楽しいといえば楽しい。外国人選手と話すことはありますが、くだらない話とかできる関係じゃないし、文化も違うし、そういう相手と同じ部屋で過ごす生活は大変ですね」

プロ1年目の2019年シーズン、下部ツアーのITFツアーを主戦場とした田島は、タイトル獲得こそなかったがベスト4以上に4度入り、2019年のATP最終ランキング(単)を629位まで上げた。そして2020年に入ってオーストラリアのチャレンジャー大会で初めて本戦1回戦を突破した。

――プロの試合はジュニアと違う?

「プロは最後まで諦めない。自分の生活がかかっているし、1回勝てば賞金額が倍になる。ジュニアのころは第1セットを取られたらすぐ諦める選手も多かったけど、プロの選手は最後の1ポイントまで諦めることがないので、そこは違うなって感じます」

――田島選手がいま戦っている下部ツアーは、テニスファンがテレビで見るグランドスラムの華やかな舞台とは違う厳しい世界。辛いと感じることは?

「正直ありますね。(ジュニアの部に出場していた)グランドスラム大会は1回戦ですらコート脇に観客がいて、股抜きショットをするだけでもウォーって盛り上がった。でも、今は会場の端のコートに飛ばされたらだれもいない。最初はびっくりしたけど、プロの下の試合なんてそんなもんだよなって」

――これからさらにランキングを上げていくために必要な部分は?

「自分が一番自信を持っているのはサーブとフットワーク。課題はストロークの安定力です。一発のショットだけでなく深さや安定感とかの細かい部分を向上させれば、もっと上に行けると思います。まずは世界ランキングを300番台にして、将来的には世界のトップ30に入りたいです」

ジュニア時代から外国人選手との試合経験を積み、世界基準のテニスを身につけてプロのステージへステップアップを遂げた。田島尚輝、19歳。次代の日本テニス界を担うプレーヤーに注目したい。


田島尚輝選手

田島尚輝(たじま・なおき)

2000年生まれ。熊本県出身。175cm、74kg。17年全米オープンジュニア単ベスト8、18年全仏オープンジュニア複優勝、ユース五輪混合複優勝。19年ナショナルユースメンバー入り、9月プロ転向。やまやコミュニケーションズ所属。世界ランク単636位、複645位(2020年3月16日付)。生涯獲得賞金額(単複合計)1万7752ドル。


田島尚輝の愛用ラケット

ヨネックス「EZONE98」

「このラケットはフレームに厚みがあるので楽にボールを飛ばせます。トップが軽いので振り抜きがよく、重量があるわりにはラケットの重さを感じずに振れるのも気に入っている点です」(田島)

田島尚輝の愛用ラケット。ヨネックス「EZONE98」

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岡田洋介
2020.08.05 17:00 投稿者:
岡田洋介
1968年、群馬県生まれ。出版社でスポーツ誌の編集職を経て独立。 スポーツライターとしてテニスのグランドスラム大会等の取材活動を行うほか、ゴルフ誌やランニング誌等に寄稿する。 2005年にテニスレッスン専門の動画配信サイト『テニスストリームTV(www.tennisstream.tv)』を立ち上げ、 テニス愛好者に役立つ上達情報を配信している。趣味の百名山登山は現在20座制覇! 【編集協力】『配球とコンビネーションで勝つテニスダブルス』(学研プラス)、『白木式コアトレ ベーシックメソッド』(学研プラス)

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